絶望から笑顔への最後の一年

 2019年8月わたしはナイロビUNHCRの職員の前で自然に涙を流しながら抗議しました。なんで性同一性障害の人を後回しにして女装者を優先して第三国定住させるのかと。職員は、そういうわけではないが、誰が性同一性障害で誰が女装なのかわからないと答えました。わたしはステファニーは6年も待たされ第三国定住できないならウガンダに戻って死ぬと言っていると答えました。すると、フランス人の女性の職員Auroreさんは、わたしの涙がウソ泣きではないと思ってくれたのか、彼女の本名と登録番号をメールしてほしいと言いました。わたしは、日本に帰ってすぐメールし、その後、彼女のカナダ行きが決まりました。
 彼女の両親はとても敬虔なカトリックなので、診断なしでトランスはよくないと考えています。アフリカでは診断できないので、欧米でトランスしたいと考えています。
 彼女の女性装は一度しか見たことないのですが、パス度はそれなりに高いほうでした。でもGDなので服だけ女性だと主張してもしょうがないと考えています。そのため、UNHCRから彼女はトランスジェンダーではないと疑われ、第三国定住は必要なしと判断されていたのです。

 彼女の性格はよくわかっているつもりなのでカナダに着いてすぐ連絡してこなくても驚きませんでした。とても慎重な性格なので落ち着いてから連絡してくるだろうと思っていました。彼女はHalifaxについて疲れて3日間寝ていたそうです。まだコロナの外出禁止が一週間あるそうです。去年の夏は死にたいと言っていた彼女が笑ってくれました。そのころスマホを盗まれて5000円のスマホを買ってあげたのですが、今日ビデオチャットで役に立ちました。

SOGIEについて迫害される人はLGBTI難民です。UNHCRはEのexpressionも認めているので、たとえ女装でも女装したことで逮捕されるウガンダからの難民にマンデートを与えています。しかし、性同一性障害(現在では性別違和GD)はアフリカでは診断できないので、埋もれている難民がいます。ステファニーはその一人でした。一般にGDの方は、体に違和感があって、化粧、女性装だけしても自分の問題は解決できないことを知っています。そのため、難民キャンプであえて暴力を受けやすい女性装はあまりしません。我慢して、自死願望だけが強くなってしまいます。目立ちたくないのでUNHCRから見落とされてしまい、第三国定住のチャンスを失ってしまいます。

GDよりクロスドレッサーをUNHCRは第三国定住に関して優先してしまう傾向があります。また、本当の同性愛者よりバイセクシャルの人を優先してしまう傾向があります。どうしてそういう傾向をUNHCRが持っているかというと、はっきり言います、面接官がシスジェンダー、ヘテロセクシャルだから自分たちに近い人の供述を真実だと信じる傾向があるからです。また、GDはクロスドレッサーより控えめに面接で述べてしまい、本当の同性愛者はバイセクシャルより控えめに述べてしまう傾向があるからです。その理由は、自分たちは差別されて当然だから人権を主張してはいけないと心の奥底でブレーキがかかってしまうからです。(暴力を受けて当然と思ってしまうので、難民キャンプで受けた暴力も全部報告しない傾向があります)

 

 

写真4 2017のトランジェンダー追悼の日  左からキンツ、ステファニー、シェリー、アブソン。この日、殺されたウガンダのトランスのために祈りました。
性同一性障害のステファニーとシェリーはわたしがUNHCRに説明したため始めてUNHCRは彼女たちが性同一性障害だと理解しました。この二人は、女装者より優先順位が低くなっていました。シェリーの場合は、わたしがホルモン支援していたことをUNHCRは知ったので優先順位が高まりましたが、ステファニーは欧米でちゃんと診断を受けたいと言っていました。

一番最初にウガンダを脱出したステファニーが第三国定住できたのは一番最後でした。

UNHCRはLGBTI難民に目立たないようにするように呼び掛けています。しかし、目立たないようにするとステファニーのように第三国定住は出来なくなります。 自己否定の先にあるのは自死です。